おぐにビーフは他の”牛飼い”と何が違うのか?今あらためて文章にしました。

今回は長文の真面目な記事を書かせていただきました。おぐにビーフのストーリーとなっています。

現在、日本全国には様々なご当地牛があり、様々なブランド牛があります。

はたしてそういったブランド牛の生産者たちは、どういったこだわりを持ってその牛を育てているのか。

おぐにビーフはそういった生産者たちとは方向性のちがう運営をしていると思っています。

その違いについてを今回はあらためて文章にさせていただきました。長いですがご一読くだされば幸いです。

おぐにビーフの始まり

おぐにビーフは平成13年に、社長の小国が裸一貫で始めた牧場です。

岩手で小売業を営む家庭の次男の小国は、漠然と動物に関わる仕事をしたいと思い、高校卒業後、北斗市(旧大野町)の牧場で働く親戚を頼り、そこで仕事をし始めました。

そして、その後すぐに畜産業を学ぶべく、アメリカに研修に行くことになります。

アメリカのアイダホ州で2年間の研修を行った小国は、現地の人の時代が進んでも変わらない”牛飼い”の誇りに触れ、日本に帰って誇り高き”牛飼い”になろうと決心します。

いろいろな品種を調べたりしてきましたが、やはり自分は日本人。日本特有の和牛に興味を惹かれました。

帰国後改めて日本の畜産技術の高さに触れ、一番魅力を感じたのは黒毛和牛でした。

そこから自分の牧場を持つべく、北斗市での新規就農を決意します。

北海道は、圧倒的な酪農地帯であり、また、地元の人は牛肉を食べる文化が希薄な中に飛び込んで、牛肉の良さを地域に浸透させたいという大いなる夢をもって自らの牧場経営が動き始めました。

北斗市は北海道水田発祥の地でもあり、米どころ。

自分の考える畜産業は稲作地帯であり、良質の稲わらが取れることが必須でした。

しかし、代々の畜産業でもなく、だれが見ても無鉄砲である挑戦。黒毛和牛を育てている農家は周りにいません。

当初は役所にも相手にされず、農地の確保も一筋縄ではいきませんでした。

地元の協力者のおかげで何とか農地を確保し、5頭の親子の牛と共に、自分の農業が幕を開けました。

”0”からの牧場作り

当時はまだ小さい子供もおり、町営の牧場で働きながら自分の牧場をコツコツとしあげていく毎日を送っていました。

家族が寝静まったころ、夜中に一人で牛舎の建築を行ったりと、まさに寝る間を惜しんで自らの”城”を築き上げていきます。

前日までは何もなかったところに、次の日の朝には建物が建っていて、近所を驚かせたことも。

すべての作業を自分の手で一つ一つ作り上げていきました。大工技術も段々と身についています。

当時は牛に子供を産ませる繁殖も行ったりと、がむしゃらに経験値を上げていくことに懸命でした。

全国には有名な牛肉がたくさんある中で、0から始めた自分はどうやって牛を育てていけばいいのか。

誰かと同じことをやっても到底追いつけるわけがない。

しかしながら、今の日本の牛肉情勢にはまだまだ伸びしろがあると小国自身は思っていました。

日本では、食肉格付制度で牛肉の価格が決まります。

A5の肉を作ることは大変な技術がいることですが、はたして本当に味に反映されているのだろうか。

日本の畜産農家は牛を育て、家畜市場に出荷し、格付けを決められ、卸売業者に納入し、飲食店やスーパーなどにいく流れが一般的です。

肥育専門だと、仔牛を市場から買ってきて数年間育てあげ、卸売業者に売却し、飼料代などを差し引き、その利幅が収益になるため、格付けが高いA5とならなければ、たちまち収入が落ちてしまいます。

そのため、すべての畜産農家はA5の牛を作ることに躍起になっています。

また、その過程には自分の育てた肉を味わうという機会がありません。

基本的には、出荷し解体された牛肉はブロックに分けられ、大きな塊として流通します。

通常の畜産農家では、そもそもそれを保管するための設備を持ち合わせてないですし、食肉販売業の許可も持っていないため、自分で自分が育てた肉を抱えるのはリスクでしかないからです。

そこで小国はそのセオリーに反し、日本において牛肉の価値を決めている、肉の重量やサシの入りかた、色、脂の厚さ以外の“味で勝負すること”が自分の牛づくりであると確信し、自分で育てた牛を自分で食べ、納得のいく味を作り出すスタイルを目指していきます。

気の遠くなるような牛の研究

しかしながら、牛を食べて味を評価するということは、育てていく過程でエサの内容を変えて、できた牛肉の味の変化をみるということ。

同じ農業でも植物とは違い、肥料などを畑の中で変化をつけて出来栄えを比べるということができません。

料理とは違い、砂糖を加えたから甘くなるというような単純なものではないため、一つ一つ試すしかありません。

まさに一頭ずつエサや環境を変え、その状態で数年間育て上げようやく出荷となり、自分で食べてそのエサが味に反映したかを一つ一つ検証するという、根気と努力で気の遠くなるような作業を繰り返して、味の向上に努めてきました。

小国は良いとされるエサはあらゆるものを試しています。

あのエサを与えた牛は、脂がベタベタになった、あのエサは人間が食べる分には良いものかもしれないけど、牛が食べても何も変化がないなど、そのエサを与えたことによる肉質や味の変化を熟知しています。

なので、ご当地牛などで「○○のエサを与えている○○牛」などというものが散見されますが、ほとんどは実証済みで、おそらくネームバリューだけで味に変化のないご当地牛を見極められる稀有な存在でもあります。

というわけで、無謀ともいえる挑戦を続けてきた「牛バカ一代」

食べ物を扱いながらも、なかなか消費者へ届くイメージが想像しずらい職業のため、高く売れるA5の牛だけを育てればいい。消費者の手元に届く時点でだれが育てた牛かなんて誰も興味ない。

この仕事を続けていくと、そんな思いを抱きがちですが、食べてくれる人の顔を想像することを忘れず、牛を育て続けてきました。

徐々にですが、近隣の飲食店から引き合いが来るようになります。

自分で育てた牛は自分で売る!

新規就農から5年後には自宅兼店舗を構え、自分で育てた牛は自分で売るというスタイルを確立します。

そして売っていくための名前ですが、全国の有名な和牛はその土地の名前がついていることが多いです。

その土地の農家や農協が牛の飼い方や育て方の統一した基準を設け、組織力や資金力でA5を作る技術を高めています。

そのため、ひとつのブランドでも育てる農家は複数人います。そして育てているのは人間です。厳密なエサの割合や与える時間帯など、人それぞれの育て方で同じブランド牛でも牛の仕上がりが大きく違っていることもあり得ます。

同じ○○牛のA5でも、方や味がくどかったりということがあるのは、こういう要因が関係しているかもしれません。

しかし、おぐにビーフは小国が育てているから「おぐにビーフ」なんです。

個人名を付けることで責任が生まれます。

そうして、地名を付けずに自らの名前を付けた牛肉を販売すべく、お客さんとの対面販売を開始します。

北海道の牛肉文化への挑戦

北海道全般に言えることですが、地元の人は牛肉になじみがありません。

ジンギスカンという北海道を代表する肉料理に加え、こちらではすき焼きや肉じゃがに豚肉を使うことが一般的なのです。

地元の人は牛肉に対し「乳臭い」とよく言われたものです。乳牛の経産牛が食用となることが多かったのでしょうか。

黒毛和牛にはその匂いのもととなる要素がありません。

むしろ「和牛香」と呼ばれる、他の品種にもない、黒毛和牛独自の特別な甘みを含んだ香りを持っていることが知られています。

「和牛香」について詳しくはコチラ

そういった誤解を解きつつ、和牛の良さをいろいろな人に知ってもらうのは時間がかかります。

まずは牛肉に対する偏見を無くしたい。そして、世界でもこれほど洗練された牛肉はないという誇りをもって広まってくれればいいなと思っています。

黒毛和牛は日本の文化が生んだ、日本が誇る宝物です。

確かに一般の食卓になかなか出せるような食材ではありません。特別な日に食べていただくものだと思っています。

だからこそ、食べていただくときにがっかりさせたくない。せっかくのハレの日に満足してもらいたいという思いがあります。

おぐにビーフはその宝物の味を最大限に引き出せるよう、長年の経験から編み出した数パーセント単位でのエサの調整をして、現在の味を生みだしています。

牛の環境も、狭い牛舎に閉じ込めて身動きをとれないようにして太らせる方法をとりません。

それをやらないことによって、丸々と太った出荷間際の牛などは、一度転んでしまうと自力では起き上がれなくなって、そのまま死んでしまうというリスクも抱えています。

しかしながら、最後までのびのびと過ごせる環境を牛に与えてやりたいと思っています。

成分的なおぐにビーフの特徴

そしておぐにビーフの牛肉の特徴の一つにオレイン酸があります。

近年、県単位でご当地牛のオレイン酸の高さをPRする流れが拡大しています。

オレイン酸とは一価不飽和脂肪酸のひとつ。オリーブオイルの主成分としてよく知られています。

オレイン酸には、動脈硬化を防ぐ役割が知られています。これは、高オレイン酸含有キャノーラ油は脂質異常症の患者の悪玉コレステロール(LDL)を低下させるからです。そのほかにも、オレイン酸は善玉腸内細菌の増殖を促進する。 アトピー性皮膚炎の患者は血中のオレイン酸含有量が少ない。 オレイン酸は大動脈血管内皮細胞の炎症を抑制する。マクロファージによる炎症物質の産生を抑制するとされています。

そんなオレイン酸は牛肉にも含まれています。全国的には55%を超えると良質の牛肉とされる流れができ始めています。

おぐにビーフの牛肉のオレイン酸値はというと、ほぼすべての牛が55%を超え、60パーセントを超えるものも。

月によっては平均が60%台になるなど、日本中の畜産農家で、この数値を出せるのはごくわずかだと思います。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

和牛香の強さも、もしかするとオレイン酸が関係しているのかもしれません。

おぐにの肉は高齢でも食べられるとよく言われます。それはオレイン酸を多く含む脂のおかげで、軽い味わいに感じるからなのかもしれません。

ここまで説明しといてなんですが、小国はオレイン酸を高くしようとして牛を育ててきたわけではありません。

自分が食べておいしいと思える牛づくりをしてきた結果、オレイン酸含有量が高い牛肉に仕上がっていたわけです。

過去からの制度への挑戦

コチラの記事でも書いていますが、

A5に代表される食肉格付けは必ずしも=味というわけではありません。

お米の食味ランキングのように審査員が食べて評価しているわけではありません。

日本人の牛肉志向が盛んになった昨今、昭和36年に制定されたままの制度では、その肉の十分な評価を満たしていないというのが私たちの思いです。

A5やA4などはまだ重宝されますが、A3以下となると、総じて”並”の扱いとなってしまい、一気に価値が下がって普通にスーパーで特売で並んでいたりします。

生産者としては、自分で育てた牛なのに生産者の名前も付けられず、「北海道産牛」という大きなくくりにはめられて、その横に半額シールが貼ってあるパックを見ると、とても悲しい気持ちになります。

みなさんの中には、何気なくスーパーで買った無名の黒毛和牛の牛肉が「おぐにビーフ」であった可能性があると思いますよ。それはそれで得されたのかもしれませんが。

いくら味がよくても現在の食肉流通の流れではどうしてもそうなってしまいます。

小国はその一頭一頭の違いを個性として考え、格付にかかわらず、お客さんにもその個性を楽しんでいただけるような考え方を持ってもらえると良いなと思っています。

日本酒やワインのように人それぞれ好みが分かれることは一般的に普通のことですが、牛肉もその年によっての違いを楽しむということがあっても良いと思います。

これを読んでいただいている皆さんだけでも、そういった事情をよく理解していただき、豊かな食生活の一助になってくれればと思います。

牛肉についてのエキスパート

最後におぐにビーフの最大の特徴ですが、それは牛飼いの小国自身が自分で育てた肉を切り分ける作業も行っているということ。

ブロックになった牛肉たちはおぐにビーフの店舗に運ばれ、お客様に出す際に小国が自ら包丁を握り、切り分けます。

焼肉セットなどは一切れ一切れ包丁を入れます。

脂身の部分をていねいに切り落とす作業もあります。

どこの”目“に包丁を入れるときれいに分割できるか、ここを切ると効率よく切り分けることができるなど、肉を切るという経験値が豊富で、その辺の料理人よりははるかに肉を扱った経験が多いでしょう。

この肉はどこの部位で、食感はこんな感じなどと、部位別の特徴や知見は抜群に高く、小国を知る料理人はそこに一目置いている人もいるほどです。

料理人と対等に部位の特徴や調理方法の相談などができることも、おぐにビーフの強みです。

みなさん、“牛飼い”が自分で育てた肉を自分で切っている人を他に知っていますか?

今回はおぐにビーフの他の畜産農家との違いを理解していただけるような文章を書いてみました。

自分が育てた牛に最後まで責任をもつ。そして誰もやっていないチャレンジをしたい。そんな小国の常に現状に甘んじない開拓者精神こそが、おぐにビーフの信用でありブランドです。

これまでおぐにビーフをごひいきいただいた方もそうでない方も、日本の牛肉をとりまく環境を少しでも理解してもらい、周りの意見や情報に惑わされず、自分にとって良い選択ができるようになれば良いなと思っています。

Writer 三上